あぶれん坊万歳!!

エンタメ同人誌aBreのブログです。2015年5月4日第二十回文学フリマ東京(C-32)に参加します。

不参加メンバーによる第14回文学フリマ感想:2 ちらほら

第14回文学フリマ戦利品感想、第二回。今回は薄手のものを四冊ほど。

サークル「新詩抄

池田陽(twitterID@oncan21)『アーキスとガラテイア』 (¥500?, 96p)
ギリシア悲劇を模した創作。この納得いかねー感はまさに本物そっくりなのである。ただ古代ふうにするにはキャラの感情がやや複雑すぎるような。
四幕の構成とか、ちょいちょい移動する場面設定とか、根本的には古典を素直になぞっているわけではないし、男女のやりとりあたりはむしろシェイクスピアでも読んでいる気分になったが、最後のデウス・エクス・マキナととってつけたような人生訓は実にギリシアですな!

サークル「原廠設計局」

佐久原廠(twitterID@Tamagawa_HQ)『ソ連が街にやってくる』 (また値段忘れちゃいました。100〜300円のどこか)
もう少し時間をかけて読まないと、多分私にはちゃんと理解できないのだとは思うけれど、決戦シーンには作者のときめきを感じられた。やっぱ愛だよね。
この方のものは以前にもちょっとだけ読んだことがあるが、仮想戦記もの、空想歴史ものとして、導入部分の持って行き方がいつも大変考えられていて、大いに学びたい部分がある。うまい。

サークル「ダグ&デイブ」

間宮篤(twitterID@kasaya_ani)『介良先輩と四つの事件』 (¥100、56p)
飲み会ミステリ短編4.5本、内1本は伝統的な「犯人当て」。
「名探偵とはなにか」、という命題が、近頃のミステリ界ではなかなか重要なようだけれど、その一つの形としての介良先輩が、回が進むごとに進化していくのが面白い。
(以下ネタバレ) 作中、結局一度も犯人は告発されない。介良先輩にはそんなことは関わりのないことだからだ。唯一犯人が捕まるであろう1編でだって逮捕劇は描かれないどころか犯人との対峙さえないのだから、この構図は徹底している。まさに「飲み会シリーズ」なのである。

アンソロジー『円盤図鑑』 (¥100、70p)
日常の謎から中世ミステリからサスペンスホラーまで6篇……なのだが、最後でちゃぶ台返しっていうかテーブルクロス抜いて皿ひっくり返るみたいなラストを迎える作品が多くて、多いというか読了した瞬間はほとんど全てだと思ってた。そうでもなかったけど。
冊子としてのカラーはある程度打ち出せていたと思うので、全体としては楽しめた。メフィスト好き向きだろうか。

……間宮篤「柳谷くんの静かな生活」(日常の謎)
まさかの系。「日常の謎」という言葉を逆手に取った、こういう世界観、好きですよ。2話からなる連作だがいくらでも続けられそうなくらい、柳谷くんはブレない。っていうかもうちょっと続けてほしかった。2話という分量は微妙。
謎解きは理論的と言えるのでは。まさかの……だけど。

……蟻田愛「緑鏡」(怪奇ミステリー)
導入部はなかなか引き込まれるものがあったが、終盤は駆け足になってしまっていた印象。視覚情報の描写がもうひとつ飲み込みづらかったのが残念。女性の一人称の語り口でキャラクターを分けるのは難しい。

……菱野隆弘「縦横無尽」(実験小説)
ちょっとした回文さえいつも感嘆のまなざしで見ている私には、「縦横どちらからでも読める」これは驚愕の見開きだった。思わずぐるぐる回してしまった。ただこれ、形式はすごいのだが、文章内容は把握できなかったんだけど、もうちょっとしっかり読むべきだっただろうか。

……相原糸「緑柱石の誉」(中世ミステリー)
洋物。謎解きの過程が独白で進むのだが、主要登場人物以外の声も聞きたかったかな、と思う。ミステリとしてはごくストレートな話かと思われるが、せっかくこの世界観でこういう話をやるのなら、色気のある文体や心理描写が欲しいかも。
個人的には、このたぐいの舞台でミステリを書こうという作者さんには、是非頑張っていただきたいところである。

……甘木史人「音の記憶」(伝記ホラー)
民俗もの好きだから甘くなるけど、設定と話の筋は面白い。「音」モノを小説でやるのは大変だわな。でもかなり頑張っていたと思う。太鼓の音や笛の響きが聞こえてくるよう。唄の頻度も適切だったと思う。
どんでん返しの説得力は、筆力で押し切るしかない部分かと。あと一歩感残る。

……井野隆弘「青龍館殺人事件」(合作探偵小説)
合作と言うが形式が説明されていないので普通に通しで読むものとして読むけど、事件のあらましもめちゃくちゃだし後半の突然のサイコ系展開もオチも「ええええ」としか言いようがないが、それはちくしょうやられたという感覚である。笑って冊子を閉じられるのは「青龍館〜」のおかげという部分はあるだろう。あるだろうけどこれはひどいなーくそー!


文責:as