あぶれん坊万歳!!

エンタメ同人誌aBreのブログです。2015年5月4日第二十回文学フリマ東京(C-32)に参加します。

不参加メンバーによる第14回文学フリマ感想:5 批評本

第14回文学フリマ戦利品感想、今回は、あまり得意な分野ではないのですが、批評誌系をいくつか読んでみました。

アートと文学の情報誌chelsea

『chelsea vol.zero』 (缶バッヂつきで¥350、20p)

コンテンツは特集「国語教科書」、一〜二見開きの小説が二本、あとアート・ニュースやブックレビュー、写真。フルカラー、大きめサイズで、ややぴらっとした質感。
小説、堀内幸太「ブーメラン」が大変面白かった。なんてことはない短編なんだけど、巧い。ブックレビューも、ちょっとあんまり見ないラインナップで好印象。それに対し、アートニュースはちょっとメジャーなものばかりという印象。
国語教科書特集は、正直あまり目新しい部分がなかった。「アートと文学」なんて面白そうなことを言っておいてからに、大学文学部誌あたりでみんなやるような特集を、普通にぽんぽんと言葉の断片を置く感じでやるのは、ちょっと勿体ない。
「情報誌」らしさも、もう少しほしいところ。準備号ということなのだと思うので、始動に期待したい。

サークルC

『C 01』 (¥200、32p)

アニメ(ウテナ)論、音楽(ショスタコーヴィチ)論、痴漢論の三本収録の批評誌。この、なんか合っているんだかないんだかな三本が合わさることで、カルチャーでもジェンダーでも思想でもないぎりぎりのラインをいっている。
三人ともそれぞれのジャンルに造詣が深く、また大いに情熱を持って取り組んでいるのだということはよく分かる。2号も期待しています。

……ohisashi「映像・キャラクター・主題と矛盾――『劇場版少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』について」
この冊子の薄さからすると字数制限がかなりあったものかと推測するが、やや筆が走っている部分があった。本編場面の読み取りは非常に丁寧と感じられるだけに、玉に瑕が入るのが残念。
終盤に、背景美術や建築を持ち出しての「不連続」性の考察が入ってきて、やはり映像作品いやアニメならではのことであるので興味深く読んでいたのが、ラストで「エロティシズム」に集約されて、初読時にはちょっと面食らった。読み返してみればそんな話してたっけ。

……緑雨ショスタコーヴィチの墓」
ショスタコーヴィチは聴いたことがないし当時の歴史もちっとも分からない私です。分からないのですが分からないなりに、語られるエピソードや言葉の積み重ねは面白い。音楽読解とはしかし、結構印象で語るのだなぁという感も受けた。時々、比喩の積み重ねがちょっと高く積み過ぎているのではと感じる瞬間がある。タイトルを見た時点でシメ方は明らかだったが、なかなか綺麗に着地してくれたのでにやりとさせられた。
音楽批評、これが初読。

……いいんちょ「痴漢の文化史」
まさかの連載である。痴漢史の本は未だないのだ、だから書く、という使命感がアツい。文章としては、ジェンダー論とフェミニズムを払いのける部分が、警戒する気持ちも分かるがやや冗長。だが全体としては恐れのない文章で、好感が持てる。第一回にあたる本篇で「先行研究」や海外の状況など、語りの下地をしっかり作っており、これからの論の発展にも既に充分期待大である。

横浜国立大学メディアスタジオ

『NOW PRINTING No.2』 (¥400、44p)

とっても贅沢な造り。全体のデザインや使用されるイメージが、ちょいちょい虚をつかれる。本の表紙をぐっと背景に掲げたり、積むにしてもこう積むかとか。こういう快楽は嬉しい。

……特集「雑誌」
結果的になのかもしれないがやや懐古調なような。だが、アイドルオタの話は非常に面白かった。この偏愛と比べちゃうと、「積読」も「カリスマ図鑑」も、もう少し掘り下げたら面白くなりそうだったのにという印象を受ける。「雑誌」とはなにか、その(黄金時代の)面白みとは、という辺りに終始してしまっているような。

……「一般意志2.0」ブックガイド
これ読んだことないんだけど、最初に提示される「要するに」が非常に分かりやすいのですんなりブックガイドへ入っていける。4分類18冊。この手の分野に明るくないが、多分わりと基本的な書物が並べられているのかな? 目立って紹介文の文字数が裂かれている二冊は08年と09年のものだが、今も問題なく通用する書物なのかな?

……コラム「ネット」
「スレタイで振り返る」から始まるのが面白かった。それこそ、そういうスレタイのスレが立っても、にちゃんじゃ単なる羅列で終わっちゃうけれど、そこから発展させていくというのが。冊子全体の中で、良い箸休めになったと思う。

……コラムコンプライアンス系男子」
文章の勝利。いや言ってることも面白いんだけど、最後が尻すぼみ気味なのとかセクハラだのエロだのの微妙なところを渡っていく危うさとかを、文章の軽快さで全然嫌に感じさせない。単純にうまい。

……review
「スポーツ」が入っていることで、単なるザ・サブカルに堕していなくてよいと思う。ただ、どうしても分量が少ないことがあってか、全体に勢いが良すぎると言うか、「知ってる人」が「知ってること」をだーっと書いている文章という感がなくもない。

文責:as