あぶれん坊万歳!!

エンタメ同人誌aBreのブログです。2015年5月4日第二十回文学フリマ東京(C-32)に参加します。

不参加メンバーによる第14回文学フリマ感想:3 ゾンビ!

第14回文学フリマ戦利品感想、第三回。今回はゾンビ本で一エントリ使っちゃうよ!

カタリタガリナ+bnkr

『bnkrR vol.4』 (¥1000、200p)
質の高いゾンビ同人だった。つまり、同人ならではの、「ゾンビ×○○」というのにきちんと意識的だった。
各話ごとについている評価軸(お食事度、バイオレンス、など)に「エロ」があるんですが、R18のものも含めて別に一向にエロくはないです。だがそれがいい。

……鳥井雪「ZBL」
これが良すぎた。導入部からの急転直下、きっちりアクション描写に古典的カタストロフ、青春感ばりばりの駐輪場でのラスト、そしておやじギャグで締める。これで18ページかよ……。落ち込むくらい面白いわ……。
(以下ややネタバレ) ちゃんと、ゾンビでしかできない恋愛小説をやっていたと思う。「○○をよみがえらせるのは」のとことか、ちょっとクサいけど、いいじゃん! こういう比喩が読みたくて小説を読んでるってところ、あると思う。

……松永肇一「ゾンビとジョブズと出荷」
出落ちもいいところ、っていうかこの設定で面白くないわけない。ちゃんと歴史小説(?)としての考証もしているあたりが素晴らしい。そういうリアルと、オタクや女格闘家やらの戯画化とがうまくハマっている。実にアメリカーンである。

……ソーシャルキャピタル」「俺の嫁がゾンビなんだが〜」「労働する死者たち」
とりあえず、ゾンビじあゃない……!
『「ゾンビ的なるもの」とはなにか』みたいな思考実験みたいなものという意味では、「労働〜」あたりは着想としては順当なんだろうけど。と言うかこれも出落ちもといタイトル落ちだな……日本におけるゾンビパロとして、タイトルを見た瞬間膝を打つ。ゾンビの如き現代人/近未来人/女たち。

……稲荷辺長太「異説 振袖火事」
なるほど、ここまでの大規模なゾンビ禍を、一体どう収集つけるんだろう、と思ったら、ちゃんと歴史小説として整合とれるんだなぁと単純に感心。怒涛の展開がしばしば見られるし、キャラ設定のえええ感はすごかったが、とにかく思い切りが良かったので乗り切られてしまった。

……「ヨミちゃんと一緒」「ひみつ、ゾンビ、夏祭り」
少女部門。ぎりゾンビ……かな……。最近はこの手の、段々自我を失っていくゾンビもゾンビに含むようですからね。というのの裏をかいた感のある「ヨミちゃん」、読後感最悪で面白かったです!

……迷路平蔵「子供たちは屍人と遊ぶ」
ゾンビ屋れい子』を思い出した。設定もだけどあのなんか、ここまでやられちゃツッコめねーよ感。なにをいい話やってんだよぉぉぉ!
カタカナで語られる夜と凄惨な昼とのズレが、やがて現実に収束し破滅を呼ぶのかと思ってびくびく読んでたらそんなこともなかった。

……比留間史乃「ゾンビモデルジェネレーション」
後回しにしてしまったけど、これが入っているからこそこの冊子には価値があると言っても過言ではないかもしれない。ゾンビ布教を目指すなら、こういうのは雑誌として必須であろう。論自体もよく考えられている。これをベースに色々語れるだろうなぁ。語りたいなぁ。

……まとめ
掲載作品はそれぞれにカラーもやり口も違ったが、どれも「ゾンビ×○○」というのを明確に示すことができるし、文章のレベルは全体としてかなり高い。みんなちゃんとゾンビが好きで書いてるんだろうなって思えるし、なによりこのボリューム! 大変お買い得な一冊でした。


文責:as