不参加メンバーによる第14回文学フリマ感想:4 大学同人
第14回文学フリマ戦利品感想、一夜おいて第四回です。
ずんだ文学
『ずんだ文学 第六号』 (¥500)
大学の文芸部の冊子として、特に人数が多いわけでもなく、金をかけている様子もなく、ここまでやれているのはかなりのものなのではないかと思う。見習いたい。
……特集:創作マニュアルガイド
大塚英志や『ミステリーの書き方』など有名どころから、近年のものやSFジャンルのものまで、27冊のレビューはなかなかの労作。時にはピリリと辛いコメントもつけつつ、5項目5つ星の採点でぱっと見も分かりやすい。ありがたい特集でした。どれか読んでみようかなあと思えた。
……企画創作「ストーリーメーカー」
大塚英志の「30の質問」に乗っ取った形で創作してみた、という企画。
前にbnkrでもこのたぐいの企画をやっていたが、雑誌の特集としてはなかなか、サークル員の腕試しにもなって面白いはず。
ここでは、短編創作までやっているのが2本、アイディアのみの提出が2本ということで、ややボリュームには欠けるのだが、創作はしっかりした、普通に読み応えのある短篇である。本文をうむうむと読んでからプロットを提示されることで、「えっこんな話だったっけ!?」と驚けるお得な作りでもあるのだ。
あとの対談でも指摘される通り、大塚メソッドは基本的に「行きて還りし物語」なのだが、この形式は解釈の余地広いなあ。
……定禅寺浮理(twitterID@toma_mori)「女体降る」
空から女の子が!という定型の話なのに、なんともまあ嫌すぎる。「人形」(ではないのだが)への愛し方も含め、順当な手続きを踏んで進んでいく話が、最後に歯車がガタンと外れる。ラストのたたみかけは風呂敷をいそいそ畳んだ感はあるが、外枠の設置が上手いので読後感は良。
……どはつてん(twitterID@C_dohatsu)「暗視」
まさかのお話である。
面白くないはずはない設定なのだが後半三分の一が分かりづらいのが残念。特殊な視点であるのでやむを得ないかもしれないが、「個体」や「生物」を人称にするのは無理がある。
読み終わってからプロットを見ると、言われてみればなるほどなぁ、と思うような、でもやっぱりこんな話じゃなかったよね!?みたいな、そのへん作者の話の組み立ての思考の痕跡が垣間見えるようで面白い。還る先、そこかぁ……。こうとしか終われないだろうなぁというラストでもあり、定形でもあり。尤も、定型には定型の美がある。
……アイディア2本
壮大すぎると書けない。っていう。
……座談会
実際に創作マニュアルで提示された方法を試してみた人たちの感想というか舞台裏を聞けるのは、単純に楽しかった。一方で、ぶんがくてきこだわりがある人たちが大塚英志を試したら、それはまあそうなるだろうなあ、というくらいの感じもなくはない。
……(自由創作) 定禅寺浮理「ホルマリン漬けの君」
抱腹絶倒した!
正直、親切な小説ではない。ぱっと見たところでは、文章についてなど、上手いのは分かるが「こういう系」かぁ、と思ってしまうのだが、それがラストで結実するに至ってはもう脱帽するしかない。こんな見事な終わり方の小説久々に読んだわ。それにしてもひどいラストであるが。
この短編を人に薦めようと思ったのだが、説明のしようがなかった。そういう小説である。
文責:as