新刊Vol.10だいたい400文字レビュー! 第三弾 「なんでもない日に起こったこと」(垂崎依都)
「なんでもない日に起こったこと」(垂崎依都)
まさかこういう結末じゃなかろうな、という結末に落とし込まれる、非常に素直なエンタメ小説が投じられた。「記念日」というテーマを与えられたとき、記念日を描くことは容易だが、何でも無い日をあえて書くという発想は一筋縄ではいかない。当然、その上テーマは消化している。
この小説を読んだ読後感は、かなりスッキリとしたものだった。まさにエンタメである。ある種のコメディの要素も盛り込みつつ、恋愛もある。加えて言うならば、謎を提示することで溜まる読者のフラストレーションもしっかりとラストで消化させ、実に爽快だ。この作品を三作目という位置づけにしたのはまっとうだろう。
下手なひねりをきかせたボール球に手を出すより、こういったど真ん中ストレートのエンタメ小説こそ、垂崎氏のお家芸なのかもしれない。
レビュー:此礼木
aBre vol.10「記念日」
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