新刊Vol.10だいたい400文字レビュー! 第二弾「シンシンセツセツ」(秋梨:作)
Load to Bunfree企画です。そういえばあと今日含めて3日しかないのに6作品レビュー出来るんですかね。一日2作品ペースなので、一日でもオトしたら終わりですな。はっはっは。
「シンシンセツセツ」(秋梨:作)
読後感としては、切なさがまず真っ先に立った。次いでその切なさに押し出される形で肺から空気が口を介して漏れる。そんな風景だった。
秋梨作品には一定の「軽さ」があると思っている。それは決して悪いことではない。軽さの由縁は、おそらく主人公達の後ろに作者自身が色濃く写っていることだろうと思う。秋梨作品の主人公達には、少なからず秋梨氏自身がちりばめられている。このことがどう作用しているかというと、主人公達の「軽さ」が地に足着いているという特徴だ。
そんな中、今作では初っぱなから地に足の着いた「軽さ」が発揮されている。地の文での独白、登場人物同士の掛け合い。その全てがリズミカルだ。テンポ良く読める。
では、テンポ良く読んで終わりなのか。時として秋梨作品ではその読みやすさに終始し、それで一貫して終わっていることがある。しかし本作では少し違う。感動を呼ぶコメディにありがちな、序盤でのアップテンポからの急降下、という展開ではない。状況はコメディなのに、どこかアンニュイ。そんな空気が、特に主人公から感じ取られる。その上で状況が非コメディに移り変わった瞬間、その空気と場面が一致する。その展開は圧巻である。
レビュー:此礼木
aBre vol.10「記念日」
aBre(C-58)で販売。6作品の読み切りと15首の短歌をご提供いたします。